病院における管理会計

厳しい時代迎えを、DPC病院であれ、ケアミックス病院であれ、療養病床をもつ病院であれ、どのような業態の病院でも管理会計が必要となりました。管理会計により、活動を計画し、また実績を迅速に把握する。そしてそれらをつぶさに分析するとともに的確に行動することが、時代を乗り越えるためのポイントだからです。

なお、管理会計は企業活動を管理する会計をいい、報告のための財務会計と区別される会計です。管理会計には、月次で行われる予算実績管理や、指標管理、そして病院原価計算等があります。

病院原価計算には、部署別活動の巧拙を判断するための部門別損益計算や経営戦略、あるいは診療政策を管理するための患者別疾病別原価計算、そして機器を購入するかどうかを判断するときの特殊原価調査といったものが含まれます。さまざまな先行指標と実績指標の比較を考慮したうえで、毎月の各部門の損益をみて、どこに経営上の課題があるのかを発見し手を打ちます。

間接部門のコストにイレギュラーはなかったか、コメディカルへのオーダーは十分であったのか、また合理的に運営されたのか。さらに外来、病棟といった直接部門には、新たな課題が発生していないかといったことが調査されます。予想された患者が来院したのか、また外来からの入院比率は、入院患者のうち手術対象患者はどうであったのかといった指標を管理しつつ、部門別損益を確認するなかで、増患や単価、紹介率、稼働率、在院日数、コスト等の課題が発見されます。

DPC病院においては、さらにDPC固有のマネジメントができているのか、ロスがないのかといったことへの検証が行われますし、また、患者別疾病別原価計算を考慮することにより、自院の得意な治療をどれだけ利益のでる治療に代えていけるのかと言ったことへの注意が払われるようになります。自院の治療のポートフォリオをどのようにつくっていくのかを検討する資料ともしていきます。

なお、特殊原価調査とは、医療機器を購入するか、リースするか、レンタルするかを決定するための経営意思決定のための原価計算です。医療機器を購入する前に、病院の患者構造や医師のスキル、地域における他病院の運営状況を勘案したうえで、自院に適した医療機器への対応を決定することを目的としています。

これらについても、大型機器のみならず中小型機器についても同様の処理を行う必要があります。その場合、MEがすべての一定程度の重要性をもつ医療機器における利用頻度、故障、修理、医療事故についての個別履歴を管理しておく必要があります。

何れにしても管理会計を導入しなければ、暗闇のなかで手元の少しの明かりを目当てに仕事をしなければなりません。とりわけ部門別損益計算や患者別疾病別原価計算の考え方を知る。そして現在導入しているものをどのようにうまく使えばあるべきかたちになるのかについて十分に考慮する。あるいは、新規にどのように導入していくのかを考えることが病院管理者の役割であることをよく理解しなければなりません。

患者別疾病別原価計算の整備には、それなりに時間を必要としますが、まずは部門別損益計算を行う体制をつくりあげることができれば、管理会計導入の本格的なスタートを切ることができます。部門別損益計算において、翌月15日に月次決算が終了する会計体制を同時に確立することで、病院経営幹部は、各部門の運営状況をつぶさに把握し、合理的な運営を行うきっかけをつくりあげることができるようになります。

部門別損益計算の導入運用手順は、

  1. 内部統制及び会計制度の現状調査
  2. 会計処理修正
  3. 指標管理体制整備
  4. 部門別損益計算導入
  5. 分析手法の提供
  6. 月次管理者会議の合理的運営
  7. 業務改革への情報提供
  8. 目標利益確保

といったながれで行います。

どのような業態であっても、病院であれば少なくとも部門別損益計算の導入は必要です。業務の可視化の精度が上がれば仔細な行動を行えるようになることは明らかです。管理会計の導入により肌理の細かいマネジメントができることを理解し、積極的な取組みを行っていくことが有効です。

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