業務改善提案はクリエイティビティの原点だ

 

多くの病院で業務改善提案制度の導入が盛んです。

  1. 方向を示し
  2. 方法を教育し
  3. 評価し
  4. 報償する

ことで職員一人ひとりの創造性や工夫を喚起、提案を受けるものです。この4つが連続することで提案が継続されます(提案サイクル)。

医療機関では従来から、提案箱といったかたちでの提案を採用しているところがありますが、
  • 何のために提案を行
  • なぜ自分が提案しなければならないのか、
  • どのように提案すればよいのか、
  • 提案した後、しっかりとチェックをしてフィードバック(評価)をしてくれるのか、そして
  • 結果に対し報償してくれるのか

といったことからすると、提案箱方式は、まったく提案が活性化する条件を満たしていないことが判ります。

まず、提案させても評価もしない、反応なし、なしのつぶて、といったことが多くあるため、職員はやる気をなくし、何も提案しなくなることが通常です。
しかし、そのような病院で説明する提案制度を導入すると、驚くことにあっという間にたくさんの提案が集まります。彼らは考えることを停止しているのではなく、提案するのを止めているだけであるということがよく分かります。
しっかりと彼らの考えを吸い上げていく仕組みがなければ、彼らはいずれ考えることすら止めてしまうことになります。現場情報を吸い上げ、彼らの意見をすべてマネジメントに活かすのではないとしても、貴重な情報として収集して整理し、課題を発見しつつグルーピング化し、問題解決に活かしている病院は成果をあげています。

改善提案制度は組織の経営資源、すなわちヒト、情報、時間、モノ、カネといったアイテムを活性化するためのとてもシンプルで成果を得られるツールであることが理解されなければなりません。

現場のリーダーが職員のこうしたほうがよいという意見を吸い上げる仕組みや文化ができていない場合には、組織が制度をを導入し、しっかりと運営します。

改善提案制度は提案を通じて、標準化、簡素化、代替、移管、廃止、内製化・外注化等の実績をつくり、考えることや提案することが創造や工夫を表現する方法であり、それは必ず自分や病院、そしてひいては患者に貢献することだということを知らしめていく必要があります。

なお、提案は1ヶ月1回の提出を義務として実施し、職員は日頃から改善への意識を高めていなければなりません。組織の働きかけにより、常に見る、常に疑問に思う、そして標準化や簡素化、代替、移管、内製化・外注化、廃止といった方法により、もっとうまく、もっとはやく、もっと安く(合理的に)というながれが職員の意識のなかにできあがります。

例えば不平不満、個人的な誹謗や中傷、そして実現不可能な願望や要望といったことは提案禁止というルールとするなど、あるべき改善提案制度の導入については、さらに重要ないくつかのノウハウが必要です。現状をどのようにみるのか、どのような着眼でどのように提案するのかをも教育したうえで成果を挙げていきます。
多様な観点からの提案があり、病院運営にとても貢献することが分ります。

なお、一定の評価基準に基づき内容の良し悪しを評価しポイントを付与して報償の基礎とします。年間を通じて優秀提供した個人やチームに表彰をする病院もあります。ただ、真面目に情報提供したり、そして実際に地道な改善を行った者に対しても何らかのかたちで(金銭、非金銭での)報償を行うことを忘れてはなりません。

病院では、病院機能評価への対応、職能等級制度導入、施設基準の取得、病電子カルテ導入や床転換、業態転換、介護事業参入、病院建て替え等々経営改革やイベントが行われることがよくあります。

しかしこれらは大抵は一部のメンバーで実行されてしまいます。一方改善提案は職員であればだれでも参加し何かを変えることができる制度です。新人からベテランまで、また職種に係わらず全員参加による改革を推進するために、業務改善提案制度を活用する病院が増加しています。

誰でも参加できる、また参加しなければならない制度としてとても有効なものであると思います。

この方法により組織活性化を図ることが人を育て組織を盤石なものとし、益々混迷する時代において、成長を促す仕組みのひとつになると考えています。
マニュアル作成及び運営により現状を可視化したのち、多くの組織で何かを創り出す改善提案制度が採用されることを期待しています。